外食、と聞いて思い浮かぶものは人それぞれ違うでしょう。ご贔屓の近所の定食屋さん、コスパ最高の外食チェーンなど現代人は様々な飲食店に囲まれて生活しています。コロナ後に美味しい飲食店が増えるかもしれない、一見訳がわかりません。そんな可能性を考えてみました。
2020年の初頭から猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響で、各国で都市封鎖や外出制限などのかつてない対応が取られました。例年とは異なる経済活動が行われ、苦境にあえいでいる業界と急成長を遂げている業界に二分されているような印象です。今回注目する外食産業は、特に大きなダメージを受けました。世界一多くの感染者を抱えるアメリカでは、消費者に対面する飲食店の2020年4月の収益が前年同月比78%減と深刻な状況です。このまま外食産業は終焉を迎えるのでしょうか。
幸いにも対面でなくとも販売できるデジタルチャネルはここ数年で大きく普及しました 。北米や日本ではUber、東南アジアではGrabのようなサービスが日常に定着しています。 アメリカの主要都市では小規模な飲食店のUber eatsへの加盟が急増しており、日本では続 々と対象エリアが地方都市にまで広がりました。この傾向はコロナ禍の一時的なものでは 無さそうです。アフターコロナの世界では、対人の商取引からデジタルチャネルを用いた 商取引へと大幅に転換すると思われます。そこで生き残っている可能性が高い飲食店は、 早々にプラットフォームを介したビジネスの有用性に注目していたお店でしょう。外食産 業は以前と同規模で存在しているかもしれませんが、外食の位置付けも外(で)食(べる)から 、外(で作られたものを)食(べる)に変化するのかもしれません。
外で食べない外食では、これまでアクセスの悪さや目に付きにくさで苦戦を強いられていたような飲食店にも大きなチャンスが舞い降ります。主要なデリバリーサービスでは、初期設定で現在地からの距離に応じて店舗が表示されるため店舗の立地は全く差別化の要素になり得ません。もちろん人口密集地に近い店舗が有利なことに変わりはありませんが、階段でしかたどり着けない雑居ビルの3階であっても改札の目の前であっても、周辺人口が同じであれば同じ土俵で戦うことができます。その他にも内装の豪華さ、バリアフリー対応、接客の質など、大きな資本を必要とする差別化ポイントの多くが機能しなくなるように思われます。
ではデリバリーサービスを通じてビジネスを行う飲食店は、どのように差別化をはかるのでしょうか。私は”味”のウエイトが大きくなるのではないかと考えています。フードデリバリーでは提供のタイミングや接客時の気遣い、かかっている音楽など食事を楽しませる工夫を“味”以外で行うことがほぼ不可能です。味は食中、食後の全てにわたって飲食店に対する印象で最も大きなものとなり、お店の指標は味に全振りになりそうです。多くの飲食店がハードウェアに割いていたお金や時間を料理の向上に回すようになると、全体的にクオリティの底上げが起こることに期待せずにはいられません。
一見関係のなさそうなアフターコロナと外食の味。しかしさらに美味しいものを手軽にいただける時代の到来に期待が持てそうです。
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